修行(雲水の生活)

四九日
しくにち

 四九日とは、四と九のつく日のことである。この日は内外の大掃除、開浴(かいよく…入浴)、剃髮(ていはつ…髮を剃る)することになっており、五日に一回の割りで回ってくる。これを雲水たちは四九日と呼んでいる
 広い境内掃除や諸堂の清掃が堂内(禅堂)、常住(じょうじゅ…寺務所)とも持ち場にしたがって行なわれる。
 浴頭(風呂焚き当番)は新旧二人の僧が一組になってこれに当たる。新到の憎は浴頭さんの指揮にしたがって風呂焚きや開浴に必要な準備をする。
 「薪はどこにあるか」と聞く新到憎に向かって、
 「薪なしで沸かせ」などと、引き手さんの厳しい答えがはね返る。
 剃髪は隣単(りんたん…隣りの席)同士で剃り合うのだが、新米憎にとってこれは大事業である。扱い慣れない剃刀、ときには頭の皮をはがれることも珍しくはない。剃り上がった青い頭のそこかしこに、止血のタモトクソが張られているのも四九日の風景である。旧い雲水たちは器用に剃刀を使いこなし、頭の二つや三つはアッという間に剃り上げてしまうのだが、初めての者にはそうはいかない。相手がコンニャク頭で毛が剛いとなれば、剃る方も剃られる方も泣き出したくなるほどである。
 禅家では入浴のことを開浴という。風呂が沸くと、浴頭はまず隠寮(いんりょう…老師の居室)に出向いて老師に開浴をすすめる。老師の開浴後に、鳴りものを鳴らして、開浴を堂内(どうない…禅堂)に報ずる。すると高単と末単からおのおの二、三名ずつ、一組となって入浴する。まず、脱衣場に祀られている菩薩に礼拝してから入る。開浴中に浴頭が入浴者の背を洗い流し、肩や首筋の按摩もしてくれる。浴頭は身体の汚穢とともに、入浴者の心の汚穢までも洗い去る意気ごみで奉仕するのである。